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ある露出狂の記録 1-2

 胸のうちに渦巻く倒錯した欲望は、昨日今日に始まったものではない。

 彼女の記憶が正しければ、小学校に入る前にはもう既に、いやらしい一人遊びを覚えていたように思われる。年齢が二桁に達するよりも早くオーガズムの味を知ってしまったほど、亜梨紗の性的な成長は早かったのだ。
 しかし、周囲の誰よりも早熟でありながら、異性に対する興味だけは全くと言っていいほど湧いてこなかった。飽くなき欲望はひたすら内側に、己の快楽を追い求める方へと向かっていったのである。

 秘められた欲望を、亜梨紗は誰にも話すことはなかった。むしろ、自分のふしだらな本性を悟られないよう、その手の会話に加わることさえ避けてきたほどだ。それが結果として、亜梨紗の評価を高める一因となったようだ。本性を隠すための行動が、他の女子にはかえってクールに見えたというのだから、何とも皮肉な話ではないか。

 誰にも見せたことのない、本当の自分。
 それを今、亜梨紗は堂々と晒しているに等しいのだ。

(こんな格好、誰かに見られたら……私、どうなっちゃうんだろ)

 亜梨紗はごくりと唾を飲み、被虐的な妄想に思いを巡らす。

 もしも、誰かに見つかってしまったら。
 赤の他人に見咎められ、冷ややかな視線を浴びせられる、それくらいなら別に構いやしない。
 だが、知り合いとなれば話は別だ。

(もしかしたら……そこの角を曲がった向こうに、友達の誰かがいたりして)

 十字路の手前で足を止め、闇の向こうに視線を送る。
 もしも、あの細い路地の奥から、顔見知りの誰かが急に飛び出してきて、ばっちり顔を見られてしまったら。
 きっとその人は、私のことを不審そうにじろじろと眺めるのだろう。冬物のコートに生足なんて格好で、おまけにフードまで被っているのだ、不審がられて当然である。そして私は訝られ、問い詰められ、ついには無理矢理コートの裾を捲られて――私の淫らな本性は、無惨にも曝け出されてしまうのだ。
 被虐的な妄想に取り憑かれ、亜梨紗は思わず自分の体を抱き締めた。

(みんな、本当の私を見たら、どんな顔するかな……)

 友人たちの顔を思い浮かべてしまい、亜梨紗は猛烈な背徳感に苛まれた。
 しかし、被虐的な思考の連鎖は、とどまるところを知らない。
 亜梨紗はその場に立ち尽くしたまま、さらなる妄想に思いを馳せる。

 例えば、路地の向こうにクラスメイトの佳奈がいて、全てがばれてしまったら。
 お喋りで下ネタ好きの彼女のことだ、きっと誰彼構わず言いふらすに違いない。噂はあっという間に広まり、学校中のみんなに知れ渡ってしまうのだろう。陰で笑われたり、からかわれたり、侮蔑の視線を向けられたりして、私はクラスから孤立する。それでも佳奈は、表面的には友達付き合いを続けてくれるのだ。でも、内心ではきっと私を見下し、軽蔑するのだと思う。

 美穂ならどうだろう。
 彼女には本気で軽蔑され、口もきいてくれなくなりそうだ。あの切れ長の瞳が、絶対零度の冷たさで私を見下す。誰にも口外しない代わり、徹底的に無視され、冷笑され、蔑まれる。私の前では二度と笑顔を見せてくれないかもしれない、そんな気さえするのだった。

 後輩の雪奈なんかは、本気で泣き出すかもしれない。
 偽りの私に惚れ、しつこいくらいに付き纏ってくるのだ。もしも本物の私を、変態露出狂少女としての仲山亜梨紗を見てしまったら、彼女はどう思うだろうか。憧憬の眼差しは一転、汚物を見るかのような侮蔑の視線へと取って代わり、容赦のない罵倒を浴びせられてしまうのかも。

(ああ、やば……ゾクゾクしちゃう……)

 想像するだけで肌が粟立ち、寒気にも似た痺れが体の芯を突き抜ける。
 無意識のうちに、亜梨紗の両手はコートの上を艶めかしく這い回っていた。
 ささやかな膨らみを厚い布地ごと鷲掴みにし、力いっぱいに捏ね回す。同時に、固く尖ったしこりに爪を立て、グリグリと乱暴に掻き毟った。だが、コートの厚さが邪魔をして、思うような刺激が伝わらない。じりじりと痺れるような感覚がもどかしく、亜梨紗はたまらずコートの留め木に指をかけ――はっと、我に返る。

(え、うわっ、私何やって……!)

 正気に戻った瞬間、心臓がドクンと跳ね上がった。
 亜梨紗は慌てて身を竦め、素早く周囲に視線を走らす。
 人の気配は皆無。夜道はしんと静まり返ったままで、街灯が不気味にアスファルトを照らしていた。家々の窓に明かりはなく、中から見られている心配もなさそうだ。

(バッカじゃないの、もう……ほんと、どうしようもない変態ね、私)

 ほっと胸を撫で下ろした亜梨紗は、自分自身に毒づいた。
 真夜中、人気のない住宅街とはいえ、あまりにも無防備に過ぎるだろう。こんな格好でうろつくだけでも危ない行為だというのに、道のど真ん中でコートを脱ぎ、堂々と全裸オナニーに耽ろうとしていたのだ。

(我慢しなきゃ……せめて、公園まで行って、木の影とかで……)

 逸る心を懸命に抑え、亜梨紗は小走りで公園を目指した。

テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

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