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ある露出狂の記録 1-1

 煌々と月の照る夜。
 仲山亜梨紗はこっそりと家を抜け出し、真夜中の住宅街を徘徊していた。

 グレーのダッフルコートに身を包み、すっぽりとフードを被ったその姿は、見るからに怪しげな風体である。
 なにせ季節はまだ初秋。肌寒い日も増えてきたとはいえ、冬物のコートを羽織るには一寸早過ぎる時期だろう。そのくせ、コートの裾からは見事な生足が伸びているのだから、寒がりだと言い張るのも無理がある。
 こんな格好を人に見られたら、露出狂の類と思われても言い訳はできまい――いや、事実その通りではあるのだけれど。

「うぅ、寒っ……」

 裾から入り込む風に素肌を撫でられ、亜梨紗は思わず身を竦めた。
 それもそのはず、亜梨紗は今、分厚いコートの下には何も身につけていない、素っ裸の状態なのだ。ブラジャーやショーツすら付けず、コートの他は靴下とスニーカーを履いているのみ。何かの拍子にコートがはだけてしまえば、彼女の裸体を遮るものは何もない。

(やっぱ、タイツくらい履いたほうがいいかな……)

 亜梨紗は胸元で腕を組み、ぶるりと体を震わせた。
 しかし、この震えは寒さのせいだけではない。亜梨紗の肉体が期待と興奮に蝕まれ、淫らに昂っている証拠でもあるのだ。

 ぞわぞわと粟立つ皮膚がコートに擦れ、身じろぎするたび、寒気にも似た痺れが柔肌を駆ける。コート一枚を隔て、生まれたままの姿で歩いている、これだけで亜梨紗はたまらない気分になってしまうのだ。

(ああ、気持ちいい……)

 フードの奥に隠れた瞳は、既にうっとりと蕩けている。
 もじもじと体をくねらせ、熱い吐息を漏らしながら、真夜中の住宅街を徘徊する少女。

 仲山亜梨紗は、紛う事無き露出狂なのである。

 もっとも、彼女自身は自分のことを露出狂だとは思っていない。人に裸を見られたいのではなく、見られるかもしれないというシチュエーションが好きなだけなのだ。本物の露出狂というのは、深夜こそこそと人目を忍んだりはしない。人通りの多い場所を際どい格好で歩きまわったり、通行人に裸を見せつけたりと、見られること自体に興奮してこそ、真の露出狂と言えるのではないか。
 その点、亜梨紗は人に見られたいわけではないし、見せたことも、見られてしまったことも一度もなかった。ただスリルを楽しんでいるだけなら、まだ露出狂とは言えないだろう。何とも身勝手な理屈ではあるが、亜梨紗はそう思っているのだった。

 ともあれ、百歩譲って亜梨紗が露出狂でないとしても、亜梨紗が変態であることだけは疑いようのない事実であった。

 外見からは想像もつかないだろう。中性的な顔立ちにベリーショートの黒髪、胸のサイズも小さめで、パンツスタイルで街を歩くと少年に間違われることも珍しくない。目付きも少々キツめで、引き締まった体躯はしなやかな筋肉に包まれている反面、女性的な柔らかさには欠けるところがあった。

 性格もサバサバしていて、色恋沙汰にはまるで興味を示さないし、下品な猥談に加わるようなこともない。学校では「クールな姐御」という印象がすっかり定着しているのだ。

 おかげで同性からの人気は絶大だった。女子高に入学して一年半、告白された回数はそろそろ三桁に届こうとしている。毎週一通はラブレターを受け取るし、バレンタインデーともなると、下駄箱や机、ロッカーに至るまで、チョコレートの箱が溢れかえる有様。ついにはファンクラブまで結成される始末で、あまりの熱狂ぶりに正直言って辟易していた。

 クールでカッコいい、学校の誰もが憧れる女生徒――これが亜梨紗の"表の顔"だ。
 誰もが疑いもせず信じている、偽りの仮面。
 その仮面を剥ぎ取れば、コート一枚で街をうろつく、とんでもない変態少女が潜んでいる。

(そう、これが本当の私……)

 亜梨紗はうっすらと自虐的な笑みを浮かべた。

テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

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